震災後の不眠症状について
2018/06/25
先日は、大阪で久しぶりに強い揺れを体感しました。
このたびの大阪府北部地震により、被害を受けられました皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
当院は被害はありませんでしたが、来院されている方の中には食器が割れたとか電子レンジが落ちて壊れたとかの話を聞きました。また、揺れの強かった枚方・高槻・茨木・摂津 方面から来院されている方もおられます。茨木市・摂津市からでは大阪モノレールを利用しての来院もあります。
モノレールも地震以降は止まっていましたが、便数を減らして再開しているそうです。
当院がある守口市でも、6月18日の地震発生直後から市内の全31避難所を開設していました。
現在は体感できる余震は減ってきましたが、大阪府北部を震源とする余震は35回を超えています。
避難生活では、慣れない環境の中でストレスも増し、睡眠もままならない状況…というのは想像できますが、避難所以外でも、余震の恐怖から逃れられず、寝ていても眠りが浅いためにすぐ目覚めてしまう方もおられます。
「本震よりも余震のほうがストレスを生みやすい」とよく言われるのは、本震の揺れがトラウマになって「またいつか来るのでは」という不安感が強くなり、脳で恐怖が生まれやすくなるためです。揺れていなくても常に揺れているような感じがして、小さな余震でも大きな恐怖につながってしまうといいます。
また、大きな震災後の不眠は、被災地以外でも生じています。被災地にいる親族や友人知人を気にかけたり、繰り返しテレビなどで流れる報道が脳裏から離れず、夜中に不安を感じて寝つけない夜を過ごしたという人も多いといいます。
震災のような大きなストレスを受けたときに、多くの人は不安を感じ、過剰に覚醒した興奮状態になります。(情動の興奮、「情動的過覚醒」というそうです)
これが夜の間中も持続するために、自然な眠りの導入を妨げます。
通常の場合には、不安の原因が解決するにつれて、興奮状態は自然に緩和されて、不眠症状も改善していくようです。そのため、震災後の数週間にみられる不眠に対しては、あまり心配する必要はありませんが、2ヶ月近い長期の不眠は注意が必要です。不眠症状だけではなく、日中に不眠による深刻な問題がある場合には治療も必要になります。
ストレスや不安感は、脳の松果体(しょうかたい)と言う部分を興奮させ、それが隣接する自律神経の中枢である視床下部に伝わり自律神経のみだれ、特に交感神経の過緊張を引き起こし、身体に様々な不快症状を現すようになります。
地震による不眠の他に、交感神経緊張による疲労感も訴えられています。
取り急ぎの不眠解消方法としては、不安を少しでも減らすことです。
例えば、余震が不安であれば避難グッズを準備する・いま一度点検してみる、避難所・避難経路を確認する、地震情報をチェックする、など、行動に移すことで少し気持ちが落ち着くこともあります。
眠りの面でいえば、睡眠時は体を冷やさないことです。
体の冷え、特に足の甲や手の甲が冷たいと、寝つけなくなります。薄着で寝たり・掛布団なしの状態など冷やしすぎないように、場合によっては靴下や手袋をするなどして、できるだけ手先や足先を温かく感じられるように工夫すると眠りやすくなります。
また、日中に活動したり、太陽の光を浴びたりして過ごすなど、昼夜にメリハリを付けると生物時計を調整しやすくなります。朝には燦々と朝日を浴び、反対に夜には明るい照明を浴びないようにしてリラックスして過ごせば、脳に信号が送られて睡眠を得やすくなります。