経絡治療は自律神経のみだれに対して有効な鍼灸術です。
当院ではこれまでの臨床経験に加え、最新の自律神経についての学説であるポリベーガル理論を経絡治療に導入して、さらに自律神経のみだれとメンタルの不調に特化した治療体系を構築してきました。これまでの自律神経の調整はアクセルである交感神経とブレーキである副交感神経のバランスを整えることを重視してきました。
この基本は変わりませんが、ポリベーガル理論では、副交感神経をその働きと分布領域によって背側迷走神経と腹側迷走神経の二つに分けました。
つまり自律神経は、交感神経と背側迷走神経・腹側迷走神経の3種の神経系から構成されていると捉えます。
背側迷走神経の過緊張で
身体がシャットダウン状態に
背側迷走神経と腹側迷走神経は、安全安心をもたらしてくれる土台となる神経系なのです。
心身の健康には、この土台となる神経系を常に十分に働けるようにしておく必要があります。
土台が弱くなっている状態では交感神経の過緊張が起こりやすくいろんな体調不良を起こすようになります。
いわれの無い不安感やいらいら感焦燥感などにも悩まされるようになります。
パニック障害や不安神経症、梅核気、動悸不眠症などの種々なメンタルの不調は、交感神経の過緊張状態が長く続いていることを示しています。
そして交感神経の緊張でもストレスなどに耐えきれないと神経系が判断すると、最終的にはシャットダウン凍り付き状態に陥ってしまいます。
この場合には背側迷走神経の過緊張状態が起こっていると考えられます。うつや引きこもりなどはこの状態です。
凍り付きモードでは、最低限の生命維持にだけ神経系が使われるので、他者との交流はできず感心も内向して外に向かうことはありません。
経絡調整によるメンタル治療では私たちの安心安全の土台である、背側迷走神経と腹側迷走神経を同時に強化し十分に働けるようにして行きます。
腎と脾を鍼灸によって活発に働けるように
これには東洋医学の腎臓と脾臓が大きく関与します。
腎臓にはストレスの影響を弱め不安感を和らげる働きがあります。脾臓は現代医学での胃腸の働きに相当し腎臓とともに生命エネルギーを生み出してくれます。腎と脾を鍼灸によって活発に働けるようにすると私たちの安心と安全の土台が強く育ってきます。
そして交感神経の過緊張によって起こっている様々な心身の不調は東洋医学で言われる気の滞りの状態です。
これを中医学では気滞と呼んでいますが、これに関与しているのが肝臓です。肝にには、全身の気の流れを円滑にする作用があります。この働きが低下すると、気滞が様々な場所で起こり多様な深い症状を起すようになります。
鍼灸によってこの肝の働きを強くして、気がスムーズに流れるようにします。
合わせて全身の気の滞りを速やかに取り除くために接触鍼による鍼施術をすることで速やかに深い症状が軽くなってゆきます。
鍼灸によるメンタル治療によって、安心安全の土台は徐々にしっかりしたものになって、日常生活に置いてストレスなどで交感神経が緊張するようなことがあっても、それが不快になるほどの過緊張状態にはならなくなってゆきます。
いろんなことが心地の良い緊張状態でこなせるようになり、緊張状態からスムーズにリラックス状態へと移行できるようになって行きます。
精神的にも安定して気持ちも明るく前向きになって日々の生活を楽しめるようになります。