カテゴリー別アーカイブ: 症例紹介

不安神経症

従来は不安神経症と呼ばれていましたが、近年ではこの病名は使われず全般性不安障害とかパニック障害と言う病名になっているようです。鍼灸と言えば痛みやこりに対する治療のイメージが強いように思われますが、最近では精神的な問題を訴えて来院される方が増えています。


また肩こりや腰痛などで来院される方も詳しくお話を伺えば精神的な悩みや職場でのストレスを抱えておられる方が多くいらっしゃいます。


◇男性 40代 会社員◇


常に強い不安感があり、緊張状態が取れず、頚や肩のこり・不眠・動悸・微熱など多くの不定愁訴に悩まされておられました。疲れると喉が痛くなり、そこから熱を出すこともしばしばあるとのことです。

心療内科で抗不安薬・睡眠薬の投与を長期間続けて来られましたが、最近ではあまり改善されず、特に不安感が強くなり、後頚部と左肩のこり感と痛みを訴えて来院されました。東洋医学では2500年以上前から、このような精神と肉体の深い関係性が説かれており、精神の異常は必ず肉体にいろいろな症状や経絡反応として現れていると考えています。


本例のような不安感は、東洋医学では五臓の腎の変調から起こると診ています。また疲れると喉が腫れて熱を出すのも腎の経絡が喉を巡っており、腎の変調を示していると判断できます。
経絡治療によって、腎の強化を図り、頚肩のこりの原因である気のノボセを下げるように施術しました。20年以上続いている症状なので、経絡治療でも効果が現れるのには時間が必要だろうと思っていましたが、7回ほどの治療を経過した時点で頚肩のこりが取れてゆき、それに伴って不安感もだいぶ軽くなってきたとのことです。睡眠も眠剤を服用すること無く取れるようになり良好です。


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生理に伴う片頭痛

◇40代女性◇


10代からの頭痛持ちで長年鎮痛剤を服用してきている。特に毎月の生理が始まる前後に強い頭痛を起こし嘔吐することもあります。右側頭部から後頭部にかけて痛み、右目の奥から顎関節部にも痛みが広がり、目周囲や唇にヘルペスを伴うこともあります。 右顔面に張ったような不快感があり常に顔面に力が入った緊張状態です。 生理の周期に伴って頭痛を起こす方は多くみられます。これはホルモンの変化に伴って自律神経がバランスを崩すことによって起こる症状です。

鎮痛剤を長年服用していると、痛みに対して敏感になり、かえって頭痛を頻繁に起こすようになります。この症例では、肝の経絡の気の滞りと診断し、肺と脾の経絡の気を旺盛にして、肝の高ぶりを押さえて滞りを除く治療を行いました。週に1度の治療を続けた所、頭痛の痛みの程度は徐々に軽くなり、6ヶ月を経過した時点で生理に伴う強い頭痛は起こらなくなりました。 この方はアトピー性皮膚炎の症状もありましたが、頭痛の軽減に伴い皮膚の状態も大きく改善しています。 続きをみる>

手の湿疹


◇50代 女性◇
手指の頑固な湿疹で20年以上悩まされておられました。

左右の指先から手首にかけての強い痒みを伴うもので、ひび割れて出血していて、水を使う家事はできない状態です。お産の後症状が出てきたそうで、皮膚科でアレルギー検査を受けられ投薬治療を続けておられましたが、一進一退でした。治療中、症状の増悪する要因として食生活が関わっていることがわかり、また天候の変化にも体調が影響されているようでした。

具体的には食べ過ぎたり甘いものを取り過ぎると指の状態は悪化し、雨の降る前などに身体が重くなったり頭痛を起こして体調不良を訴えておられました。天候の変化で体調が左右される方は多いですが、これは自律神経の不安定が原因です。

鍼灸治療では、肝臓と脾臓のバランスを整える治療を行い、また指先の爪の際にある井穴というツボに対して熱を漏らす目的で接触するだけの鍼をしました。このような治療を週に1度半年ほど継続したところ、体調の好転とともに指の状態は改善されて湿疹はほぼ消失しきれいな状態に戻り、とても喜んでいただきました。指先の井穴というツボは、体内の余計な熱や邪気を取り除く命穴ですが、自律神経の調整にも優れた効果を発揮するものと考えています。

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原因不明の筋痙攣

鍼灸治療を長年していると、時々西洋医学では原因がわからず改善が難しい症状でも
経絡治療で奏効する場合があります。
今回の症例は、全身の筋肉がぴくぴくと不随運動を起こすという男性です。

◇50歳代 左官業◇

今から10年近く前の症例ですが、印象深く記憶に残っています。
手や足、いろんな所の筋肉が常に軽いけいれんを起こしていて、お仕事や日常生活にも支障を生じて
おられました。触診してみるとまぶたの筋も細かく震えているような状態です。
まず考えられるのは脳に原因する中枢性の病だと思われましたが、脳神経外科などで詳しく検査しても
原因となるような事は見つからず、精神安定剤を処方されていました。

東洋医学では、筋の病は肝が深く関係しているとみます。
またお聞きすると筋のけいれんは、緊張すると強くなるということでしたので、精神的な緊張が交感神経の
高ぶりを起こし症状につながっていると診ました。
東洋医学の肝は交感神経との関わりが深いと考えています。

またお仕事でも筋肉に疲労を来している状態で、筋肉事態を緩める必要があると思いました。
治療は、肝を整える全身調整の鍼施術と、筋肉を緩める治療を行いました。
治療開始時にはなかなか症状の好転がみられませんでしたが、3ヶ月ほど経過してから徐々に症状が
軽くなってゆき、2年ほど週に1度の治療を継続して、当初の症状は消失しました。
西洋医学でも、最近になって筋肉は第2の肝臓であるとして、筋肉と肝臓との関係に
注目するようになってきました。2500年以上前に書かれた東洋医学の古典に、
既に「肝は筋を司る」と明記されていることに、驚かされる方も多いのではないでしょうか?

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妊娠中に発症した顔面神経麻痺

◇女性27歳◇



第一子出産直前に左耳から顔にかけての部分に帯状疱疹を発症し、その後顔面に麻痺が残ってしまった。来院時は発症から半年以上経過しており顔面神経麻痺でも難治性とされているハント症候群でした。経絡治療による全身調整に顔面部を流れる手足の経絡の気血の流れを良くする目的で施術し麻痺している部分には接触するだけの軽微な鍼施術を行い、合わせて顔面筋の簡単な運動を指導させていただきました。



週に1度の感覚で一年間治療を続けた所運動麻痺は少し残っているものの、外見上はほとんどわからない程度に回復しました。当初あった耳の周りと頬の鈍痛も消えて、水を口に含んでも漏れなくなりました。



顔面神経麻痺は鍼灸が奏効する症状の一つですが、できるだけ発症からすぐの治療開始が望まれます。
今回の場合、半年以上経過してからの施術でしたが、経絡治療と積極的で熱心なリハビリ運動のおかげで良い結果につながったと思います。




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自律神経失調による腹部の張りと痛み

自律神経のアンバランスで起こる症状には様々なものがありますが、人それぞれの体質や環境によって強く症状を現す部位は異なります。腹部の訴えを強く表していた症例を紹介します。




◇男性36歳◇

腹部特にみぞおちから胃の部分に書けての張りと痛みが10年間続いている。

大学病院で胆道ぢすきねじーと診断され投薬を受けたがあまり好転がみられず当院を受診されました。心窩部の張りと痛みは一日中続き、特にストレスを強く感じると増悪して痛みが背中にも感じるようになって辛い。



経絡治療の診察によって肝と脾の変動として治療しました。肝虚脾実に対応した経穴に施術後、右胆経絡の気の流れを良くするように右足部の経穴を選んで施術、背中の緊張を取るために温灸などをしました。このような治療を 週2回のペースで行ったところ、5回目で腹部の緊張は少し緩むようになり疲労感が減少し10回目の治療で当初の張りと痛みはほぼ消失しました。今は健康管理のため、2週間に1度程度来院されています。



肝の臓は全身の気の流れをスムーズにする働きがあります。これがうまく働かないと気の停滞を起こします。肝の経絡は直接みぞおちに影響を及ぼし、胆の経絡も停滞すると胆道に悪影響を起こします。人がストレスを受けると、まず肝の臓がこれに対応して働きますが、これが過常に働いたり機能低下を起こすと交感神経の過緊張状態に陥るようになります。
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顔面けいれん

東洋医学では肝は筋を司るとされ、筋肉の症状に対しては肝に関わる経絡を調整することで治療します。

最近の医学でも筋肉は第二の肝臓であると言われるようになって、肝臓と筋肉の関係が注目されています。

2500年前の古代中国の医書である素問霊枢にすでに肝臓と筋の関係が明記されていることには驚かされるばかりですね。



40代の女性で、左顔面、目の周りの筋肉がぴくぴくとけいれんを起こし1週間続いているとの訴えでした。

徐々にけいれんする範囲が広がり、左鼻の横、ほっぺたから唇にかけて引きつるようになりました。接客業なので訴えは深刻です。

診察の結果、肝の亢ぶり(肝実)と診てこれを押さえる治療に加えて、顔面を巡っている経絡の調整を行いました。発症後間もなく治療できたこともあり、計3回の治療でけいれんは起こらなくなりました。

肝の経絡は、特に交感神経の緊張に大きく関わりがあり、今回の場合もそのようなメカニズムで症状を起こしていたものと考えています。 続きをみる>

経絡治療 刺さない鍼 その1

 鍼灸と言えば、鍼は痛い・灸は熱いと言うイメージが強いようです。


 しかし経絡治療では、鍼は痛くなく、灸は熱くありません。


 経絡治療では、極細くて柔らかな鍼を用い、皮膚の浅い部分の反応を治療対象とし


ますので、ほとんど鍼を指していると言う感覚もありません。


また鍼の刺し方も撚鍼と言う技で無痛に施術することが可能です。



 一方、経絡治療では、全く鍼を身体に刺入すること無く、皮膚に触れるだけで治療


する方法もあります。


 これを接触鍼と言いますが、まさしく皮膚に触るだけなので完全に無痛です。


どうして触れるだけで治療ができるのかと思われる方も多いようです。


本来鍼灸治療は、身体の気の調整を須丸としていて、接触鍼・刺さない鍼は、この気


の調整に優れた方法なのです。



 気は、全身あらゆる所に巡っていますが、特に皮膚の浅い部分に気の働きが活発に


働いています。一番浅層で、私たちの身体を包み守ってくれている気を衛気と呼んで


いますが、接触鍼は、この衛気を調整する働きがあります。


 


 写真はテイ鍼と言う刺さない鍼の一つです。東洋はり医学会の初代副会長の小里克


之先生が考案された小里テイ鍼で、和あたしが主に使用しているのは銀製のテイ鍼で


す。


 刺さない鍼も、その形状と材質によっていろんな種類があります。


これから数回に分けて、この刺さない鍼をご紹介します。


 


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自律神経失調による腹部の腫れ痛みに対する鍼灸治療


●2009年 日本伝統鍼灸学会 学術大会 症例発表 抄録

大阪 奥田 稔



はじめに

虚実に対する補瀉は、鍼灸術の要であり、東洋はり医学会では脈状および病態に応じ

て多様な補瀉手法を開発し実践運用している。

中でも、気の滞りに対する和法、虚性の邪に対する補中の瀉は、日常臨床に欠かせな

い手法である。

今回、10年にわたる腹部張痛を、本会の基本である相剋調整にこれらの手法を用い

ることによって、比較的早期に緩解せしめた症例を得たので紹介する。

症例



患者: 男性 36歳 職業: リフト運転



初審: 2008年3月



主訴: 胆道ぢすきねじーによる腹部張痛

現病歴:

10年前、頭部の急な掻痒感を伴う湿疹から発症。

湿疹が消退後、異常な食欲更新のため多食し、腹部の激痛を発症。

激痛は治まったが、その後、腹部の張痛を絶えず感じるようになった。

大学病院の心療内科にて、胆道ぢすきねじーと診断され、投薬治療を受けたが、あま

り効果が無く、その後症状の変化無く現在に至る。

現症:

腹部、特に心窩部の張れ痛みが一日中続き辛い。

起床時や、仕事等でストレスを感じると増悪し、痛みが背部に響くようになる。

既往症:  13歳 十二指腸潰瘍 33歳 椎間板ヘルニアによる右座骨神経痛



随伴症状:

・目

眼精疲労が強く、眼球が固まってくるような感じがする。(特に左)

疲労が高じると焦点が合わなくなり、軽い目眩を伴うようになる。

充血、白目がやや黄味を帯びている。

疲れやすく、動悸がし、身体が重い。



問診:

飲食

口苦が強く、食べ物の味がよく分からない。

満腹感が常にあり、食欲はあまり無いが、量は普通に食べている。

特に好き嫌い、五味の偏りはない。

少し便秘傾向。



手掌、足裏からの発汗しやすい。

手足の冷えは感じないが、頭部に熱感を感じる。



切診:

全体に体表の浅い部分の虚が顕著であり、特にナソ部(缺盆を中心とした部分)、背

部、四肢末端(井穴)の皮膚のの緩みが強い。

・腹診

上実下虚を呈しており、心窩部から中かん、肋骨弓にかけて実(緊張)が強く、圧し

て不快感を感じる。

小腹は、浅い部分から深部にかけて力無く陥下して虚、冷えも強い。

ナソ

左右 の缺盆の虚 後頚部の実

左 乳様突起下ぶの実

背部

心兪 肝油 胆兪 脊際から輸血にかけてきょろ所見



左右の 肋骨に沿ってきょろ所見多数





脈診:

浮・数・虚

脈幅が広く、全体に締まりがなく無力、数が目立つ。

比較脈診では、左関上()の陰陽の差が最も大きく浮位において実を触れ陰の肝の診

所は虚。

右関上 陰の脾の診所はやや実。



治療および経過:



証:肝虚脾実相剋調整

本治法:

陰経 左 極泉・陰谷右 公孫和法

陽経 右 光明 支正 補中の瀉

標治法

関元・ナソ てい鍼による補法

背部 筋縮・脊際 右側胸部のきょろ所見に対する和法による処置



経過

上記の治療を週に2会のペースで行う。



5審目で、心窩部の緊張が少し緩み目の疲れも軽くなってきた。

8審目 更に心窩部の緊張が緩み、皮膚の緩みが軽減し、脈も締まってきた。

10審目 腹部張痛はほとんど感じられなくなり、口苦や目の黄ばみも消失。



考察

胆道ジスキネジーは、器質的異常が認められないにも関わらず、胆道括約筋の運動、

緊張の異常のために疼痛を起こす疾患であり、精神緊張、自律神経失調などが主な誘

因とされている。

本症例は、肝の疏泄失調による気の滞りがその中心的な病態であり、証法一致の経絡

調整が功を奏したものと考えられる。

ストレスの増大している現代社会において、今後ますますこのような病状で苦悩する

人が増えるに違いない。

これに対し、臓腑経絡の気を整える伝統鍼灸の存在意義は大きいと言える。











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WHOの鍼灸適応症




WHO(世界保健機構)は、鍼灸治療で効果が認められている疾患を公表しています



これを見ると、その適応範囲の広さに驚かれるかもしれませんね。

日本の一般的な認識では、鍼灸と言えば痛みやこりにするものと言うのがイメージと

して強いですが、海外では鍼灸に対する考え、イメージはもっと広くなっています。





●運動器系疾患

関節炎、リウマチ、頚肩腕症候群、五十肩、腱鞘炎、腰痛、外傷の後遺症



●神経系疾患

自律神経失調症、頭痛、めまい、神経痛、神経麻痺、痙攣、脳卒中後遺症、パーキン

ソン病、膀胱神経失調症



●精神症状

鬱病、不安神経症、神経質、不眠、パニック障害



●消化器系疾患

胃痛、胃弱、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘、胆嚢炎、肝機能障害、肝炎

、胃十二指腸潰瘍、痔疾



●呼吸器疾患

気管支炎、喘息、風邪とその予防



●循環器系疾患

心臓神経症、動脈硬化症、高血圧低血圧症、動悸、息切れ



●代謝内分泌系疾患

バセドウ氏病、糖尿病、痛風、脚気



●泌尿器系疾患

膀胱炎、尿道炎、性機能障害、尿閉、腎炎、前立腺肥大、インポテンツ



●婦人科疾患

更年期障害、不妊、生理前症候群、乳腺炎、白帯下、生理痛、月経不順、冷え性

●眼科疾患

眼精疲労、仮性近視、結膜炎、疲れ目、かすみ目、ものもらい



●耳鼻咽喉科疾患

中耳炎、耳鳴、難聴、メニエル氏病、鼻出血、鼻炎、蓄膿、咽喉頭炎、扁桃炎







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