月別アーカイブ: 2019年9月

季節の変わり目の不眠

秋分を迎え、すっかり秋めいてきましたね。暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言うものです。

ところで、季節の変わり目になると、花粉症と同じくらいに増えるのが「不眠」による不調です。
当院にも不眠の悩みで来られる方、また別の症状とともに眠れないとおっしゃる方は多いです。

東洋医学では、不眠を身体の陰陽の気のアンバランスとしてとらえ、治療しています。
多くの場合、陰気の弱りから、相対的に陽気の方が昂ぶり熱となって頭部に停滞する(気が上がっている)ことで眠れない状態になっています。

肝と腎の陰気を増やし、上半身に停滞している陽気による熱を冷まして、気を引き下げるように治療します。

また、頑固な不眠症状の場合、鍼灸治療とともに『ヨーガニードラ』を眠りに就くときにするよう、指導させてもらうこともあります。

『ヨーガニードラ』は、寝たまんまヨーガとも言い、身体を動かすこと無く、呼吸や脱力 ボディーサーチ、イメージトレーニングを行うもので、リラクゼーションに優れたヨーガです。
昂った神経を鎮めやすく、不眠にもとても有効です。

また、民間療法として有名ですが、寝る前にホットミルクを飲むようにしたら、自然に眠りにつけるようになったという話を聞きます。
牛乳には、心を安らかにする働きがあるカルシウムが含まれるほか、別名「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンという成分も含まれます。メラトニンには、脈拍や体温、血圧を低下させるなど、睡眠を促す作用があるといわれています。

食べ過ぎ・飲み過ぎはよくはありませんが、就寝前に少量の消化のよい食べ物を胃に入れると、血液が胃に集まり、脳が休まります。特に温めた牛乳やハーブティーなどは体を温め、神経を落ち着かせて寝つきをよくしてくれます。

また、タマネギのスライスを皿にのせて枕元に置くと、気持ちがリラックスして心地よい眠りにつけるようです。タマネギには目が痛くなる独特の臭気がありますが、これは硫化アリルという化合物が含まれているためです。硫化アリルには神経の高ぶりやイライラを鎮める働きがあります。 続きをみる>

鍼灸を学ぶ方へ オススメする本

ここ数年で「筋膜」「筋膜リリース」などの言葉は、広く浸透してきたように感じます。
なみはや支部会でも取り上げましたが、「筋膜」”Fascia”(ファッシア)の概念を含め鍼灸を学んでいる方・鍼灸に造詣が深い方へオススメする本をご紹介します。


閃めく経絡(ひらめくけいらく)

The Spark in the Mlachine
現代医学のミステリーに鍼灸の"サイエンス"が挑む!


ダニエル・キーオン
Daniel Keown


須田万勢・津田篤太郎[監訳]
建部陽嗣[訳]


医道の日本社 書籍発行
https://www.idononippon.com/book/shinkyu/1036-7.html


〈 内容紹介 〉
「鍼灸はなぜ効くのか?」閃く経絡
発生学と筋膜の理論から明らかに!


全身に張り巡らされる十二の経絡。
経絡《けいらく》上の経穴《ツボ》への鍼や灸、マッサージ、指圧が、全身に影響を与えることを治療家ならば誰もが経験しているが、その存在は明らかにされていない。
そんな目に見えない経絡や経穴について、発生学の最新知識から読み解いたのが、本書である。


「気」とは何か。なぜ経絡がこのような配置なのか。
これらの答えは人体がどのように発生し、どのように作用しているのかを深く理解することで明らかになる。


また、本書が導く知られざる鍼灸の「サイエンス」は、現代医学では未解明の部分を解き明かす。
身体を巡るミステリーの鍵は「ファッシア」(筋膜・膜)にあった。
鍼灸師で救急診療専門医の著者による、医学の常識を覆す英国の話題作がついに上陸!


● 鍼灸治療の新しい治効メカニズムを徹底解明
● 現代医学の進歩で分かった、黄帝内経『素問』『霊枢』の真意
● 経絡の配置の意味とは?「三焦」「心包」の正体は?
●「気」の存在を否定することは、生命自体を否定すること
●「ファッシア」(筋膜・膜)が、西洋医学と東洋医学をつなぐ


〈 著者略歴 〉
ダニエル・キーオン(Daniel.Keown)
1998年にマンチェスター大学医学部を卒業した後、救急医療を専門とする医師として活躍するかたわら、2008年にキングストン大学統合医療カレッジで中医学を学び、中医学と鍼治療の学位を取得。2010年には北京の経絡医学研究センターで王居易医師に師事した。2014年にthe membership exams of the College of Emergency Medicine (MCEM)を取得。長年の目的は西洋医学の最前線で鍼灸と氣を再確立することであり、その経緯で本書が生まれた。


この本は、イギリスの中医学・鍼灸を学んだ救急医療専門医が、西洋医学を用いて東洋医学を説明できないか真摯に考えたものであり、発生学の最新知識と、古くからある伝統医学の両方をつなぎ合わせるものとなっています。

経絡をこのような切り口で語った本は、おそらく初めてではないでしょうか。
東洋医学の理解を深めたい学生や、鍼灸に造詣のある方には興味深い内容かと思いますよ。 続きをみる>

鑑賞して楽しむ「秋の七草」

台風による被害が毎年増えてきていますね。
秋の風物詩でもありますが、サッと通り過ぎてほしいものです。

ところで秋といえば、「春の七草」のように、「秋の七草」なるものがあります。

ちなみに「春の七草」は、1年の無病息災を祈ったり、正月料理で疲れた胃を休めるものとして、1月7日の人日(じんじつ)の節供に七草粥で食する風習が今でも続いていますよね。正月も三が日を過ぎると、スーパーの店頭に七草粥セットなどで並ぶため、ご存じの方も多いでしょう。

しかし、秋にも七草があることは意外と知られていません。秋の七草の存在を知っていても、七草の名前を全て言える方はもっと少ないでしょう。

「秋の七草」は一般的には、奈良時代の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で次の2首の歌に詠んだことから、日本の秋を代表する草花として親しまれるようになったとされています。

 「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
(万葉集  一五三七 巻八)

 「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」
(万葉集  一五三八 巻八)


1つ目の歌で「秋の野に咲いている草花を、指折り数えると7種類ある」とし、
2つ目の歌で「それは萩の花、尾花、葛(くず)の花、撫子(なでしこ)の花、女郎花(おみなえし)、また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお)の花である」と述べています。

※「朝貌」については「朝顔」「木槿(ムクゲ)」「桔梗」「昼顔」など諸説ありますが
現在 一般的には「桔梗」を指すとするのが有力なようです。

〈 秋の七草の紹介 〉
【萩】(ハギ)
「萩」とは「秋に咲く草」という意味。お彼岸のおはぎは、この萩に由来します。

【桔梗】(キキョウ)
花期は夏なので、夏の着物によく描かれています。根は太く、喉に効く生薬になります。

【葛】(クズ)
茎で籠や布を織り、根から採取したでんぷんがくず粉となります。
くず粉で作ったのがくず餅。漢方薬の葛根(かっこん)は、葛の根を乾燥させたものです。

【藤袴】(フジバカマ)
乾燥させると香りが強く、桜餅のような香りがする。貴族たちは湯に入れたり、衣服や髪につけていたとか。別名「蘭草」「香水蘭」。

【女郎花】(オミナエシ)
恋に破れて身投げした女の脱ぎ捨てた山吹色の衣が、この黄色い花になったといいます。全体に大きく白い花が咲くのは「男郎花(オトコエシ)」。二つの自然交配種は淡い黄色で「オトコオミナエシ」といいます。

【尾花】(オバナ)
ススキのこと。草が茂っている様子が「薄(ススキ)」で、穂が出た状態は動物の尾に見立てて「尾花」といいます。ススキは「茅(カヤ)」ともいい、これで葺いた屋根が「茅葺屋根(かやぶきやね)」です。

【撫子】(ナデシコ)瞿麦とも表記
愛児を失った親が、その子の愛した花を形見として撫でたことに由来し、別名「片身花」といいます。日本女性の代名詞「大和撫子」はこの花からきています。

春の七草が七草粥にして無病息災を祈るものに対し、秋の七草はその美しさを鑑賞して秋の風情を楽しむものです。そのため、これにちなんだ節供や行事があるわけではなく、7種一緒に何かの祭祀などに使用されることもありません。
秋の七草の特徴は、見て楽しめるだけではなく、薬用など実用的な草花として昔の日本人に親しまれたものが選ばれている、ということです。 続きをみる>

「手当て」

前回のブログで、最後の方にちらっと出た「手当て」という言葉。
大概は、病気やけがの処置をすることをいいますね。

「手を当てる」というと、手の平を人や物の表面に当てる(触れる)ことを指すます。
しかし、その意のとおりにそのまま、医師が病人やけが人に「手を当てて」いるだけでしたら、患者さんも周囲の人々も怒り出すに決まっていますよね。(あやしげな宗教?でもあるまいし・・)
ここでいう「手当て」は人手やお金を割り当てて物事を処理すること、と考える方が良いかと思います。

子どものころ、『 痛いの、痛いの、とんでいけ~ 』と、おまじないのように、痛いところに手を当ててもらったら心なしか良くなった・・という経験はありませんか?

不安や緊張を感じたときに手を擦ったりして、心を落ち着かせる。
お腹が痛いときはお腹を撫で、頭が痛ければ頭を抱える。
痛みや不快を感じる部位へ無意識に手を当ててしまうのは、「手に癒やしの効果がある」ということを本能的に知っているからなのです。人間の生得的に備わった自然の反応です。

また、手を当てると遠赤外線効果がはたらき、当てている部分がじんわりと温まってきます。
温まると血行が良くなり、自然治癒力を促進するという作用もわかりますね。

手を当てると鎮痛作用のある神経伝達物質β-エンドルフィンの濃度が高まるというデータもあります。オキシトシンが分泌されて全身にひろがることも確認されているようです。

手を当てることで癒やしがもたらされると言うことは、本来誰にでもできる能力です。
これを体系的な「気」のメソッドとしたのが、明治時代の「霊気(れいき)」ですが、その後欧米に渡り、「Reiki」として多くの国で代替医療として認められ、保険適応であったり国家資格として、医療行為とされています。

「手当て」とは、それだけの力を持っているのですね。
日本生まれの霊気が、海外で盛んに行われている現状は私自身とても興味深いです。
当院での経絡治療も手当ての施術であるといえます。

日本伝統鍼灸の特徴として、皮膚の触覚所見を重視し、鍼の施術も極浅いところで効果が出る、というものがあります。
鍼灸の臨床を長年にわたりしていると、自ずと触れることによる癒やしの力が増してくる実感があります。 続きをみる>