鍼の自律神経調節メカニズム

先日の NHKの東洋医学の放送回 は、一般的には良い内容でした。
鍼灸を含め、東洋医学を多くの人に知ってもらえるきっかけになったと思います。
経絡治療をやっている者としては少し物足りなさを感じましたが、またその辺りの補足についてはこのブログの中で追って書かせていただきますね。

さて、せっかくなので今回も鍼灸の基礎的な話です。
鍼灸、の「鍼」の方。鍼の自律神経調節作用のメカニズムについて書いてみたいと思います。

鍼治療は、髪の毛ほどのとても細くしなやかな鍼を用いて、ツボ(経絡)に刺激を与え、気が整うことで身体の異常を治療します。痛みなどの不快な感じはなく、とても心地の良い感覚が得られます。
治療には「補瀉(ほしゃ)」という方法があります。気は、身体のごく浅い部分を流れていますので、補瀉の鍼もごく浅い部分にすることで、気血は調整されます。

「補:ほ」とは、身体に不足しているものを補うこと
*鍼を皮膚に浅く刺す(浅鍼:あさばり)際、呼気(患者さんが息を吐く)に合わせて刺す
*経絡の流れに沿って刺す


「瀉:しゃ」とは、身体から余分なものを排出すること
*鍼を皮膚に刺す際、吸気(患者さんが息を吸う)に合わせて刺す
*経絡の流れに逆らって刺す


浅く刺す浅鍼は交感神経を抑制させ、副交感神経に働きかけます。
皮膚の浅い部分は、交感神経が優位に働いており、経絡治療によるソフトな鍼施術によって、交感神経の過緊張が収まり、心身をリラックスモードに導きます。

治療は、ほとんどの場合、交感神経の過緊張を抑制し、副交感神経の働きを高めることが大事なので、浅い鍼施術で治療効果が上がります。
また最近の皮膚科学では、脳の疲れを取り心を癒やすホルモン「オキシトシン」が、皮膚からも分泌されていると言うことが発見され、大きな注目を集めています。
皮膚に対して施術する経絡治療には、心の疲れを取り癒やす効果があります。

東洋はり医学会の経絡治療ではほとんどが、筋肉までは深く刺入せずに、補瀉を行っています。
(細かいことを書くと難しい表現になりますが)押手左手の母指〈第1指:おやゆび〉と示指〈第2指:ひとさしゆび〉で鍼を挟んでいますが、この押手の母指と示指の左右圧をかけることで「補」になり、皮膚面に圧をかける下圧で「瀉」を行っています。

呼気では副交感神経が優位に、吸気では交感神経が優位になるため、呼吸に合わせて鍼を刺す治療というのは、自律神経調節に効果的なのです。
鍼の刺激は自律神経を介して、皮膚や筋肉の血流・血圧に作用します。

補瀉での全身調整によって、生命力は強化され自然治癒力も十分に働く状態になります。
脈もゆったりとスムーズに打つようになり、精神もリラックスした状態です。
このように、古来より鍼治療は、自律神経をコントロールして、内臓機能や身体の異常を治す治療として確立したのです。