成人の日に思う「袖を振る」

今日は成人の日ですね。二十歳になられた新成人の皆さま、ご家族の皆さま、おめでとうございます。

ところで、成人式といえば女性は振り袖姿というのが一般的なようですが、普段着物を着慣れていないうえに床まで届きそうな長い袖に四苦八苦…なんて光景も見られます。なぜあんなに長い袖を着るのでしょう。

振り袖の由来は、飛鳥時代まで遡ります。万葉集の歌にも出てくる「袖を振る」という動作には神様を呼び寄せる、厄を払うなどの呪術的な力があるとされ、「魂振り(たまふり)」(神の魂を揺さぶること)と呼ばれていました。
「袖振る」とは、別れを惜しんだり、愛情を示したりするために、袖を振る動作であり、魂を鎮(しず)める呪的行為であったとされています。たとえば、別れ際に見送る側が袖を振るのは、これからの旅の安全を祈る呪的行為であった、ということです。

やがて、人に対しても思いや願いを伝えるために袖を振るようになり、若い女性は良縁を得るために袖を振り、その効果がより高まるように、と袖が長くなっていったそうです。
また、その振袖で密かに愛情表現をしたとも言われています。
現代でも言葉で使う、「振った・振られた」という表現は、実は振袖を使ったこの風習からきているのだそうです。

「無い袖は振れない」「袖振り合うも多生の縁」「袖にする」など、袖に関する慣用句が多数あるのも興味深いですね。
ちなみに東洋医学にまつわる「袖」では、『救瘟袖暦』(きゅうおんそでごよみ)という書物があります。
こちらは東洋医学に限らず(東洋医学・漢方医学をふまえた)臨床経験にもとづき創意工夫を加えた医学入門書であり、テキストとして門人に医業を授ける目的で著述されたものとされています。

『救瘟袖暦』は、救瘟:瘟疫(高熱を発する感染症)を救う意の書物であり、熱病に対する治療の方針は「患者の病態をよく理解したうえで定めるべきものだが、熱病は、一方では年々あるいは時節の変化によっても多様な諸症状を呈するものであるため、個々の病人の症状や様態に応じて治療法を検討すべきである」とし、著者みずから経験した治療法の得失を広く公開されている内容です。いやはや、先人の恩恵に感謝の気持ちを抱くばかりです。